介護施設における認知症介護では、細心の注意を払う必要があります。介護者が目を離した隙に利用者が思わぬ行動を起こし、介護事故に繋がってしまうケースは珍しくありません。そのため、認知症の高齢者の介護をする時にはなるべく目を離さないよう、見守りを強化することが求められます。また、あらゆる自体を想定し、少しでもリスクを減らす心がけも必要です。
例えば、食事介護をしているとき。食べて良いものと悪いものの区別が付けられない高齢者の場合、テーブル上の箸置きや、料理を彩るための飾りを口に入れてしまうことがあります。そういったことを考え、食事介助をする際には、手の届く範囲に余計なものを置かないようにしなければなりません。このように、身の回りの環境を良く見て、想定される危険を一つでも減らすことが介護事故を減らすことに繋がります。
そして、もう一つ認知症高齢者を介護する時に注意したいのが、普段の接し方です。認知症になると本人が忘れたくなくても物忘れをしてしまいます。その結果、同じ話を繰り返したり、同じ行動を取ることが多くなります。
そこで介護士がムッとして感情をあらわにすると、その気持ちが高齢者に伝わり不穏な空気になってしまいます。結果的に関係がギクシャクしてしまうと、介護士の言ったことを全く聞いてくれなくなったり、他の高齢者に暴力をふるってしまったりと手がつけられなくなる場合もありえます。
何度も物事を忘れられてムッとする気持ちはわかりますが、認知症本人はわざとやっているのではありません。やりたくなくてもそうなってしまうのです。そこをきちんと理解した上で、嫌な感情が湧いても軽く流して笑顔で接することが大切です。笑顔で接して高齢者を安心させることができれば、普段の介護ケアもより楽になってくるでしょう。